Mogwai / Mr Beast

spiton2006-03-29

今作の音楽性を、箇条書きに連ねてみることにしよう。

・原点回帰を思わせるようなノイジーなギターが印象的。
・前作、前々作の流れを受けた、ほのかにスペーシーなシンセが美しい。
・ピアノの比重が多くなり、轟音ギターと合い重なって上り詰めるような楽曲が多く見られる。
・数曲に再びヴォーカルを取り入れている。
・のっぺりとしたリズムが少しだけ影を潜めた。
・相も変わらず、ノイジーでありながらも穏やかで暗く、そして美しい。

つまり何が言いたいのかというと、音楽性にしろ方向性にしろ、大方の予想を覆すようなものではなく、集大成と言われた前作を更に推し進めたような作品だということ。なので、この作品を革新性やら時代背景やらをもとに文章を書こうなんて思うのは、大きな間違い(決して言い訳ではない)。個人的にはマスターピースとなった前作から早3年、「より早くより先に」という変化が求められがちな現代において、この堂々とした作風には本当に頭が下がる。デビュー時には、当時のロックの衰退なんかと相俟って「新世代の旗手」的なポジションに仕立て上げられたりもしたが、本人たちからすればそんなものは糞食らえだったことが、この作品を聴くとよく分かる。そして、作品が発表される度に僕が感じることは、やはり彼らの音楽というのはMy Bloody ValentineMercury Revに近い耽美なギターサイケというよりは、Tortoiseなんかのポストロック〜音響的なポジション、もっと言えばMumSquarepusherといったエレクトロニカ〜テクノ辺りに近い匂いを感じるということ。まあM2なんかでは完全メタル仕様のサウンドを聴くことも出来るが、実際はM9のポエトリーリーディングを聴くと、そっちに本質があるような気がしてならない。エレクトロニカが現代のフォークとして成り立つのならば、Mogwaiの音楽をフォークやカントリーに準えることも間違いではない。なので個人的に次作は、年明け予想外に激ファンキーな傑作をTortoiseと共に発表したBonnie‘Prince’Billyとの共作を切に望む。土臭く、ネクラな傑作を作り挙げてくれることだろう。こんな妄想、ホントいい迷惑だ。それでもライブは全然違うんだろうな。この時期にFuji Rockでのステージ、見逃す手はない。


Best Track : #6 Friend Of The Night