近況報告、思うこと。

spiton2008-02-13

[Spit On] vol.3の配布がほぼ終了した。
まず、配布した場所を書いておく。


◎[Spit On] vol.3 配布場所
ライヴハウス
渋谷周辺…渋谷屋根裏、渋谷Lush、渋谷Quattro、
新宿周辺…新宿Jam新宿Loft新宿Marz
吉祥寺周辺…吉祥寺曼荼羅吉祥寺Warp
下北沢周辺…下北沢440下北沢屋根裏、Basement Bar、下北沢Era、下北沢Shelter、下北沢Que


HMV
アクアシティお台場店、池袋サンシャイン60通り店、川崎Dice店、横浜Vivre、横浜World Portor店、吉祥寺パルコ店、渋谷店、新宿east店、新宿south店


Tower Records
秋葉原店、池袋店、川崎店、吉祥寺店、聖蹟桜ヶ丘店、渋谷店、新宿店、千葉店、横浜モアーズ店、札幌ビヴォ店、仙台店、名古屋近鉄パッセ店、梅田NU茶屋町店、難波店、福岡店、那覇


Wave
成田店、船橋


Village Vanguard
下北沢店、千葉店、成田店


他にも、学生時代の先輩が大阪のショップ等々で配布をしてくれたり、
つくばに住むイラストレイター・natunatunaさん(http://www.geocities.jp/sarunatu/)が
つくば/水戸方面で手渡しの奇跡を体現してくれたりと、多方面の方にお世話になった。
本当に、本当にありがとうございます。
また、mixiでもキセル木下美紗都さんのコミュニティで呼び掛けたこともあり、
僕に直接連絡していただいた多数の方から、賞賛をいただいた。
素直に嬉しい。
一番嬉しかった。
活字の力、紙媒体の魅力は失われていないと感じた瞬間でもあった。


勿論、賞賛ばかりではなかった。
僕の自我が強い原稿に、不快感を抱いた方も少なくはなかった。
以前にも指摘を受けたことがあるのだけれど、
音楽はアーティスト以外の誰かを成功させたり、陥れたりするものではないから、
音楽を語ることが僕自身の自己主張に変換してしまっては、いけないのだ。
例えば、七尾旅人911 Fantasia』に対するあの原稿。
「ファンの総意だよ」という下り。
あの部分に対して、旅人さんのプロモーターの方から苦言をいただいた。
そのプロモーターとは、僕のボランティア時代(wonderground music)の直属の上司に当たる。
表現者の側近として感じた純粋な怒りと、僕に対する期待と愛情から生まれた出来事だった。
杉山さん、頑張ります。
誤ってはいけない。
自分の原稿、言葉一つに対して、責任を持たなければいけないから、誤ることは出来ないと思った。
いい原稿で彼らに返すしか、僕には残されていないのだ。


作り手と聴き手の架け橋になること。
それが今一番、強く感じていることだ。


旅人さんと言えば、彼のインタヴューを掲載したFree Paper『farewell』を読んだ。
http://d.hatena.ne.jp/farewell419/
思ったことは大きく2つ。
まず、素晴らしい媒体だと素直に思い、僕も負けて入られないと奮い立たせられた。
『farewell』は音楽誌というよりはサブ・カルチャー誌なので、[Spit On]とは基本的に立ち居地が違う。
僕がやっていることがベッドルームというテーマを基にした、手に取れる範囲内での愛情表現だとすれば、
『farewell』はもっと大衆全般に呼び掛ける、言ってしまえば『911 Fantasia』にそのもののような雑誌。
国民レベルでのポップ・カルチャーの転換(大いなるファンタジー)を願い、そこに自らも加担していく。
音楽のみを取り上げているわけではないが、貫ぬこうとする意志と統一感が素晴らしかった。
自分のことを卑屈に思う必要はないのかもしれないが、『farewell』がやろうとしていること、
そこに書かれている原稿の内容は、僕が作ったモノよりも一枚上手のように思えた。


そもそも、『911 Fantasia』という作品は、今回の2007年総括の10枚に選ぶべきではなかったのかもしれない。
あの作品は前衛的でありながらもエンターテインメント性を持った、
ベッドルームから出発した、ベッドルームを批判する作品だった。
ベッドルームの批判とは、我々[Spit On]のスタンスに対する批判でもある。
mixiでのコミュニティのような小さなファンタジーの拡散を、彼は嘆いていた。
僕がやろうとしていることは、実はそれだったりする。
その拡散する小さなファンタジー(愛情)を、いかにして大きな共同体へと繋げていくことが出来るか。
自分と“うた”だけしか存在にしなかった閉ざされたベッドルームで培われたアイデンティティを、
いかにして世に照らし合わせることが出来るか。
本誌のポイントはそこにある。
誤解されちゃ困るから敢えて書くけど、旅人さんはそうした小さなファンタジーを全否定しているわけではないよ。
あの『911 Fantasia』という作品に限って言えば、大いなるファンタジーを伝承させていくことを目的とした作品だった。
だから、とても感情的ではあるけれども、ベッドルームで培われた“うた”というよりは、
予め大きく開かれ誰もが耳を傾けなければならない、冷静沈着な賢者の視点が開眼した作品だった。
そう、根本的な選出に無理があったのだと思う。


旅人さん自身に取材をしたにも関わらず、僕が『911 Fantasia』を今の今まで理解し切れていなかったのは、
間違いなくベッドルームの功罪である。
10年前に彼が登場した時に冠されていたイメージ、それこそベッドルーム代表のような身勝手な期待。
それが僕を惑わし続けていた。
巡り巡って、今やっと理解できた。
そして今、自分に対して、旅人さんに対して正直に思うことを書くと、『911 Fantasia』は少し苦手ということだ。
僕は、まだまだ聴き足りないんです。
ポップ・カルチャーの飽き足りるほど、音楽を聴き漁っていない。
911 Fantasia』に肩透かしを食らったファンというのは多分、音楽的な経験がまだまだ不足しているのだと思う。
これはあくまで僕の個人的な意見。
総意とか書くつもりはない。
それに僕自身がノスタルジックなだけなのかもしれない。
結局はその辺りの怠慢がベッドルーマーの功罪になっているのだから、
Blog以上のメディアで原稿を書き続ける以上、もっと音楽を聴かなければならないと、今感じている。


今、旅人さんの音楽を聴くことは、僕には辛過ぎる。
恐らく、少し距離を置くことになると思う。


話が飛躍し過ぎた。
『farewell』を読んで感じた、もう一つのこと。
[Spit On]はもう、商業誌の枠に入ってしまったのかもしれないということ。
Free Paperのスタンスなんて様々、好き勝手だろうからあまり気にすることはないのかもしれないが、
『farewell』のカルチャー誌としての内容を目にすれば、我々の内容は商業化していると感じる。
それは良くも悪くもある。
僕はライターとして、音楽で飯を食おうと企てているわけだ。
だから腹を括らなきゃ、音楽を聴く資格なんてないんだ。
アーティストに、音楽に、“うた”に対して、もう失礼なマネは許されない。


話を戻そう。
[Spit On]の次号は、今のところ4月下旬発行の予定。
ただ、季刊誌として無理に発行して質を下げるよりは、
自分が良いと思えるアーティストを素直に紹介して、エッジを保ちたい。
だから、少し遅れることになるかもしれない。
特集内容はおおよそ固まっている。
最新号を読んで喜んでいただいた皆さん、期待して下さって大丈夫です。


こんなBlog書いているから、「エゴが強い」とか言われるのだろう。
僕には伝えたいことがあり過ぎる。


今日の1曲 : ROVO / Hoama